●CT検査-V −CT検査で分かること Part.3(頭部領域)−
<上野浩輝:石心会狭山病院>2009.07.25 第257回定例研究会 臨床情報講座
CT検査で分かること 今回は頭部領域について発表させて頂きます。 本日は、基本的な解剖や救急疾患を中心にお話しします これからCT装置をさわる方や、新人の方を対象にお話しさせて頂きます。 |
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皆さんにお聞きします。 CT検査とMRI検査を比較した場合、頭部領域の情報量が多いのはどちらでしょうか? もちろんMRI検査の方が情報量の多い画像が得られます。 では、頭部領域におけるCT検査の利点はあるんでしょうか? この講座で少しでも頭部領域におけるCT検査の有用性を理解してください。 |
本日の内容
●頭部CT検査
頭部領域におけるCT検査とMRI検査の使い分け この表は、教科書などで記載されていますので、みなさんもお目にしたことがあると思います。 脳梗塞を除くと、他の疾患に関してはCTもMRIもさほど大差ないような印象を受けます。 |
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CT検査とMRI検査は利点と欠点 この表で重要なのはCTの利点でもある『短時間で検査が行える』ということです。 頭部領域の疾患は生命・予後に関わりますので、いち早く診断する必要性があります。 そのため、 『短時間で検査が行える』ということは、CT検査の非常に高い利点となります。 ※マウスを画像に重ねてください |
以上の事から、CT検査とMRI検査をまとめる…
●脳疾患各論 −脳卒中(脳血管障害)−
脳卒中 脳血管病変が原因で引き起こされる脳神経系の障害を脳卒中と言います。 脳卒中には、出血性病変と虚血性病変の相反する病態が含まれます。 出血性病変では『くも膜下出血』や『脳内出血』、虚血性病変では『脳梗塞』や『一過性脳虚血発作』などがあります。 |
虚血性病変
脳梗塞 脳動脈の狭窄または閉塞によって、その支配領域が虚血となり、脳神経組織が壊死する状態を『脳梗塞』と言います。 原因は様々ですが、『動脈硬化性病変』や『心臓疾患』などがあります。 |
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異常所見は? この方は、左片麻痺で救急搬送されてきた方です。 この画像から異常を見つけることが出来るでしょうか? |
脳梗塞 前の画像は、発症から1時間後に撮影された画像です。 特に、CT画像上では異常は認められません。 では、6時間後の画像はどうでしょうか? モーションアーチファクトがあり、少し分かりずらい画像ですが、右の皮髄境界が不明瞭な印象があります。 発症から1日後に撮影された画像を見ますと、さきほど指摘した領域は明瞭な黒い領域と変わっています。 また、2週間後の画像では、その領域が不明瞭になっていることが確認できると思います。 |
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脳梗塞のCT所見 CT検査では発症直後、異常を指摘する事は出来ません。 CT画像上で脳組織に所見が認められるのは、およそ6時間以上経過した後と言われています。 また、2〜3週間程度経過すると、脳梗塞部分の低吸収域は不明瞭となります。 その後、再び低吸収域となります。 |
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脳血管と動脈支配領域 脳梗塞はどの血管が梗塞しているのか?範囲はどの程度か?という情報が必要です。 脳の血管は、ある程度、脳組織の支配領域が決まっています。 CT画像上、脳梗塞を認めた場合に、どの血管が梗塞しているのかということが推測できます。 その為、脳血管と支配領域を覚えておく必要があります。 |
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赤い矢印→で示す領域が、正常脳組織と比べると、低吸収域となっています。 この領域は、一番左のシェーマを見ますと、中大脳動脈領域となっています。 つまり、この画像の診断は『左中大脳動脈閉塞による脳梗塞』という事になります。 また、右の画像を見ますと、 中大脳動脈のみならず、前大脳動脈・後大脳動脈領域までもが低吸収域となっています。 この3本の血管の中枢側は内頚動脈ですので、この画像の診断は、『左内頚動脈閉塞による脳梗塞』ということになります。 |
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急性期脳梗塞のearly CT sign 脳梗塞という疾患は、時間と共に正常脳組織にダメージを与えていきますから、いち早く診断する必要があります。 しかし、脳梗塞が発症してからおよそ6時間以降にならないと、CT画像上に所見は出てきません。 そこで大切になるのが『 early CT sign 』です。 『 early CT sign 』とは… @白質/灰白質の境界不明瞭化 A脳溝の消失 B閉塞動脈の高吸収域 です。 下の画像は意識障害にて搬送され、当日検査を行った時の頭部CT画像です。 |
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翌日、同様に頭部CT検査を行いました。 この画像を確認すると、左中大脳動脈領域が梗塞しているのが認められます。 では、当日のCTでearly CT signが認められたのでしょうか? |
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もう一度、前スライドの脳梗塞発症当日に実施したCT画像を確認してみてください。 赤い丸○で囲む場所に通常、左中大脳動脈が走行しています。 この画像をみると、左中大脳動脈の走行に合わせて高吸収域を認めます。 このように、early CT signを見逃さないことが、CT画像上で急性期脳梗塞を見逃さないポイントになります。 |
出血性病変 −くも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage : SAH)−
くも膜下出血 くも膜下腔に出血が起こり、脳脊髄液に血液の混入した状態を言います。 症状は様々ですが、頭を割られたような激しい頭痛や嘔吐がほとんどです。 原因は脳動脈瘤の破裂、脳動静脈奇形などがありますが、圧倒的に多い原因は脳動脈瘤の破裂です。 |
くも膜下腔 この図は冠状断像です。 頭蓋内には3つの膜があり、外側から硬膜・くも膜・軟膜の順です。 そして脳実質があります。 くも膜下腔は名前のとおり、くも膜の下にある隙間を示します。 通常、くも膜下腔には、脳脊髄液で満たされ、そのほかの液体は存在しません。 |
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このスライドがくも膜下出血の画像です。 通常、くも膜下腔には、殆ど水とCT値の変わらない脳脊髄液という液体が流れています。 そのため正常のCT画像(上2枚)では、鞍上槽や迂回槽、シルビウス裂などは黒く描出されています。 下側がくも膜下出血のCT画像です。 くも膜下腔が白く描出されていることが分かります。 この画像はくも膜下出血の典型的な画像ですので、覚えておいて下さい。 |
脳動脈瘤の発生部位 このスライドは、脳動脈瘤の発生しやすい部位の一覧です。 脳動脈瘤が出来やすい部位を覚えておくことは非常に重要です。 では、なぜ重要なのでしょうか? |
破裂動脈瘤はどこでしょう?? 実際、くも膜下出血と診断したら、それで終わりではありません。 脳動脈瘤の発生しやすい部位を知る事により、破裂動脈瘤の位置を推定することができます。 これにより、CT-Angiographyを作成する時や脳カテーテル検査などを行う場合に、的確な画像を提供することが出来ます。 では、くも膜下出血の画像を見て頂いて、破裂動脈瘤を推定して見て下さい。 |
答えは右中大脳動脈の動脈瘤の破裂です。 このように、CT検査から破裂動脈瘤を推定することが出来ます。 |
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見落としやすいくも膜下出血 くも膜下出血は今まで見て頂いた画像のように典型的なものばかりではなく、見落としやすい、くも膜下出血もあります。 出血が非常に限局されているもの、高吸収を示さず脳実質とほぼ等吸収のもの、また好発部位から外れているものは見落としやすくなります。 |
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こちらの方は頭痛を訴え、搬送されてきました。 はたして、出血はしているのでしょうか? この、2時間後、再度撮影を行いました。 |
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最初に見て頂いた画像のように、典型的なくも膜下出血の画像となります。 では、もう一度、搬送された時の画像(前のスライド)を見てください。 |
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見つかるでしょうか? 答えは、この赤い丸○で囲んだ場所です。 非常に限局している出血の為、骨のパーシャルボリューム効果によるものと勘違いしてしまうかもしれません。 この様に、限局している出血でも、経過時間とともに予後は悪くなりますので、気を付けて画像を見る必要があります。 ※マウスを画像に重ねてください |
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目に焼き付けて下さい!! もう一度、SAHの典型的な写真を示します。 この画像は忘れないで下さい。 |
出血性病変 −脳内出血 (Intra Cerebral Hemorrhage:ICH )−
脳内出血 脳実質内に血腫が形成されたものを脳内出血といます。 原因は高血圧によるものが殆どで、脳内の小動脈に負担がかかり出血を起こします。 出血部位と発生頻度についてはスライドの通りです。 |
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出血のCT像 血流中の血液は脳実質と等吸収域ですが、出血が起こると高吸収域となります。 このスライドの画像のように、脳出血という診断することは難しくはありません。 |
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出血好発部位の正常解剖図 小脳レベルでは小脳・橋が出血しやすい部位になります。 基底核レベルでは被殻・視床が出血しやすい部位です。 代表的な脳出血を簡単に説明していきます。 |
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代表的な脳出血を簡単に説明していきます。 被殻出血 症状は片麻痺や感覚障害などがあります。 レンズ核線状体動脈と呼ばれる動脈は、中大脳動脈からの分岐動脈ですが、このレンズ核線状体動脈と呼ばれる動脈の破綻が原因で被殻出血は起こります。 |
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視床出血 症状は血腫と反対側の感覚障害や軽度の片麻痺などがあります。 後視床穿通動脈や視床膝状体動脈の破綻が原因で視床出血は起こります。 |
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小脳出血 小脳は、運動調整機能を行っている為、回転性めまいを主とし、嘔吐、頭痛などの症状が現れます。 しかし、四肢の麻痺は認めません。 原因は脳底動脈から分岐する上小脳動脈の分枝動脈の破綻です。 |
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橋出血 橋出血の場合は、意識障害や四肢麻痺、著明な両側の縮瞳などの症状がみられます。 橋出血の原因は脳底動脈から分岐する正中穿通動脈の破綻です。 |
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脳内出血で一番重要なのは、出血部位とサイズです。 血腫の圧迫により、頭蓋内圧が亢進し、意識障害を起こし、死に至る場合があります。 これが脳ヘルニアと呼ばれる状態です。 そのため、血腫の局所的な圧迫の除去を目的とした手術を行う場合があります。 CT検査は、ある一瞬を撮影して診断を行っています。 その為、数時間後にはどのように変化しているか分かりません。 ですから、脳内出血は経過観察が非常に重要になります。 |
●頭部外傷
硬膜外血腫 硬膜は、血管に富んでいて、頭蓋骨に強く付着しています。 その為、頭蓋骨骨折が起きると硬膜の血管が破綻し頭蓋骨と硬膜の間に出血が起きます。 これが、硬膜外血腫です。 典型的な症例では、短時間の意識障害が回復し、数時間経過した後、急激に意識状態が悪化します。 つまり、硬膜外血腫を認めた場合には、迅速な診断と治療が必要となります。 |
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急性硬膜外血腫 硬膜外出血は、硬膜と頭蓋骨との間に出血を起こします。 硬膜と頭蓋骨は頑丈に結合されている為、脳表にはあまり広がらず、脳実質を圧迫するように出血していきます。その為、凸レンズ状の血腫が認められます。 急性硬膜外血腫は受傷側にしか起きないのも特徴の一つです。 出血が微量の場合には凸レンズを呈さず、診断が難しいため、WWやWLを変更して、観察する必要があります。 |
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急性硬膜下血腫 外傷後の急性期に硬膜とくも膜の間に出血し、血腫を形成したものを急性硬膜下血腫と言います。 硬膜とくも膜の間には、硬膜と頭蓋骨との間のような頑丈な結合はありません。 その為、脳表に広く広がり、三日月状の出血が認められます。 脳挫傷による脳表血管からの出血のため、受傷側にも反対側にも発生します。 |
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このスライドは、急性硬膜外血腫と急性硬膜下血腫の特徴をまとめた表です。 | |
外傷の場合、硬膜外血腫あるいは硬膜下血腫のどちらか一方の疾患とは限りません。 スライドの図のように、硬膜下血腫と硬膜外血腫が同時に発生する場合があります。 その為、WW・WLを変更し確認することが重要となります。 |
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慢性硬膜下血腫 発症の原因は外傷ですが、症状を出るほどの出血量には達していません。 その後、皮膜が形成され血液と髄液が増量し、脳を圧迫します。 硬膜下血腫ですので、画像所見では三日月状の血腫を認めます。 しかし、慢性化している為、急性期と違い脳実質と等吸収の場合や、低吸収の血腫として認められます。 |
ご静聴ありがとうございました。 |
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