心エコー検査でわかることT









●エコー検査でわかること-U −下肢血管を中心に−
 <山田貴子:石心会狭山病院>2008.02.16 第242回定例研究会 臨床情報講座


超音波検査の特徴

《利点》
○ 被曝がない
○ リアルタイムな検査が簡便に行える
《欠点》
● 術者の技量に依存する
● 術者の主観が入る
超音波検査は被曝はありませんし、描出範囲は狭いですが他検査と比較してリアルタイムな検査が簡便に行なえるなどといった利点が挙げられます。また、超音波検査はペースメーカー挿入、腎機低下の患者に有効となります。
しかし、術者の技量に依存し描出能が大きく異なることや、術者の主観がはいってしまうため画像だけでは病態が把握できず術者本人にしかわからない場合があるという欠点もあります。

カラードプラの原理 

カラードプラの原理

超音波のカラー表示を簡単に説明します。

赤・青のカラー表示は動静脈の区別ではなく、血流がプローブに対して向かってくるのか、離れていくのかを示しています。
プローブに対して向かってくるなら赤く、離れていくなら青く表示されます。
極端な話ですが、同じ血管でもプローブに対する方向が異なると、表示されるカラードプラの色も異なります。

下肢動脈検査

  • 体位は仰臥位
  • 両側検査
  • ボディマークを明記
下肢動脈検査時、基本的に体位は仰臥位で行ないます。
そして症状が一方しかなくても必ず、両側検査します。
血管の超音波、特に縦断像では、左右の判別は術者にしかわからないですし、ときに術者でもいろいろな部位を観察しているうちに左右の判別が不明になることがありますので必ずボディマークを明記します。
総腸骨動脈から分岐した外腸骨動脈は鼠径靭帯の下で総大腿動脈に連続します。
総大腿動脈から深大腿動脈と浅大腿動脈とが分岐します。
浅大腿動脈は,膝窩動脈へと移行して、前脛骨動脈と後脛骨動脈、腓骨動脈とに分かれます。

当院では、全て検索しますが、何も異常所見が得られない場合には大腿動脈、膝窩動脈、前脛骨動脈、後脛骨動脈を静止画像として残しています。

画像の表示方法
縦断像については、画面左側を中枢側(心臓側)とし、画面右側を末梢側として表示します。
こちらは動脈ですが、白いライン状に見えるのが血管壁、その間の黒く抜けているのが血管内腔です。

縦断像は血管の長さ方向をみて、プラークの長さや血流を測定する際に用います。
横断像については、画面の左側に被検者の右、画面右側に被検者の左を表示し、CTやMRIと同様に被検者の尾側からみた像を表示します。
画面右が動脈、画面左が静脈を示しています

横断像はプローブを進めるときに用います。

狭窄率の評価方法
  • 径狭窄率
  • 面積狭窄率
狭窄率の評価方法には、縦断面で血管径から判断する径狭窄率と横断面で血管面積から判断する面積狭窄率とがあります。
カラードプラによる評価

正常像です。血管全体にカラードプラが表示されています。
径狭窄率は、狭窄部の径とその中枢側の正常部の径を計り算出します。
この場合、本来の血管は点線部分までですが狭窄しているためカラーが表示されません。
正常部は8mm、狭窄部は2.5mmですので、狭窄率は69%となります。

この場合、血管に対して垂直に超音波ビームが当たっているかどうかが重要となります。
先ほどの正常像の横断像です。短軸でもカラーが血管全体に表示されています。
狭窄時を示します。
本来の血管は点線部分までなので径狭窄率はおよそ70%ですが、面積狭窄率では、正常血管面積が0.72平方センチ、狭窄部の面積は0.14平方センチなので、狭窄率はおよそ80%です。
このような、狭窄が偏在している病変の場合は、狭窄部の横断面から面積狭窄率を計測することで、より重症度が反映されます。

この場合も、血管が短軸となるように描出されていることが重要です。

動脈血流波形
横軸に時間、縦軸に速度をとると、正常な動脈ではこのような3相波形が得られます。

ドプラの色は動静脈の色ではなく、血液の流れている方向をあらわしますので、プローブから離れる方向に流れているので青く描出されています。そのためドプラ波形が下向きに表示されます。
波形パターンの変化

計測部より中枢側に狭窄があるとその重症度にしたがって、波形が3相波形でなくなったり、山の立ち上がりが鈍化したり、さらに山の高さが低下するなどの変化が認められるようになります。
波形パターンに変化が認められるのは有意狭窄とされる50〜75%以上といわれています。
縦軸は速度を示していますので、山が低下しているということは速度が遅くなっているということになります。

また、膝窩動脈では正常でも(B)のような波形を示すことがあるので注意しなければいけません。

さらに、狭窄部で波形をとると1つめの山が高くなります。
これらのグラフを見ながら次の症例をご覧ください。

閉塞性動脈硬化症

(ASO:Arteriosckerosis obliterans)
ASOとは

粥状硬化症を原因とする閉塞性動脈病変が、慢性的に徐々に進展して動脈の血流障害をきたす病態。
大腿動脈と大腿静脈を表示しています。

プローブに近い側にあるものが動脈、深部が静脈です。
動脈の、中枢側にカラードプラがのっていないのがわかります。
これを波形で表示すると、山はありますが切れ込みがなく、3相波形を示していないのがわかります。
これは軽度の狭窄を伴ったASOの波形のパターンです。
これは大腿動脈です。
本来の血管の範囲は点線と実線の範囲ですが、カラードプラが一部のっていないのがわかります。
この縦断面で、径狭窄率は40%ほどと考えられます。
しかし、波形をとってみると切り込みはなく、山が低くなっているのがわかります。

波形が変化するということは中枢側に狭窄があるということなのですが、腸骨内はガスが多く超音波では検査が困難なことがあります。

下肢静脈検査

  • 体位は必要に応じて座位、立位
  • 深部静脈は動脈と併走している
  • プローブで押さないよう注意する
下肢静脈検査時も、体位は基本的には仰臥位で行ないますが、血流量が少ない患者の検査時には膝を立てたり、座位、または立位にて行ないます。
深部静脈は動脈と並走しているので動脈が描出できれば静脈も描出が可能となります。
静脈は圧迫により潰れてしまうため、強く押しすぎると描出できないことがあります。

ただし、表在静脈や筋肉枝は動脈とは並走しないので丹念な検索が必要になります。
下肢の静脈は深部静脈、表在静脈、穿通枝の3つに大別されます。

深部静脈の解剖

前脛骨静脈と後脛骨静脈・腓骨静脈が合流して膝窩静脈となり大腿静脈へ移行します。
深大腿静脈と大腿静脈は鼠径靭帯の下で合流し外腸骨静脈となり、さらに内腸骨静脈と合流して総腸骨静脈となります。

深部静脈は動脈とほぼ併走しています。
静脈壁には逆流防止のために静脈弁があり、下腿3分枝が動脈を挟んでそれぞれ対になっているところが動脈と異なります。
穿通枝とは深部静脈と表在静脈をつなぐ血管のことで、片方の下肢に100本以上存在します。
穿通枝や表在静脈は動脈に関係なく走行していますので、丹念な検査が必要となります。

下腿内側の大伏在静脈と下腿後側の小伏在静脈があり、深部静脈と数本の交通静脈で連絡してます。
また、静脈壁には逆流防止のために静脈弁があります。
(前脛骨静脈は前脛骨筋の外側の縁を上行。後脛骨静脈は脛骨の後を上行する。腓骨静脈は両者の間の間を通り後脛骨静脈に合流する。それに膝窩静脈と浅大腿静脈が含まれる。)
深在静脈
鼠径靭帯より末梢側が総大腿静脈、近位側が外腸骨静脈である。
(大腿静脈の分枝は大腿動脈より遠位側に位置する。)
内転筋管内を走行する部位より膝窩静脈となる。
(内転筋管とは後側を長内転筋、内側を大内転筋、外側を内側広筋、前側を広筋内転筋膜で囲まれた空間で大腿静脈は内転筋管を貫き膝窩へと走行する。
膝窩静脈より前脛骨静脈分枝し、さらに後脛骨静脈と腓骨静脈に分枝する。この3本を下腿の3分枝と呼ばれています。
また膝窩以下の静脈は動脈を挟むように2本へ併走しています。
腓骨静脈よりヒラメ静脈の最大分枝である中央枝と外側枝が分岐し、後脛骨静脈から内側枝が分岐します。

表在静脈
皮下の浅在筋膜の直上もしくは直下を走行し、(拡張や収縮による血液量の調整を行うことにより、体温の恒常性の維持に関与している。)深部静脈に比べ血管壁は厚く、大伏在静脈と小伏在静脈系に大別される。

穿通枝
表在静脈と深在静脈を連結する径3mm以下の細い静脈。
臨床上重要な主な穿通枝として下腿内側の大伏在静脈流域の穿通枝である膝上のドッド(Dodd)穿通枝、膝下のボイド(Boyd)穿通枝、足関節部のコケット(Cockett)穿通枝がある。(不全穿通枝は静脈瘤が消失する部位に多く見られる。)

白い線状に描出されているのが静脈の血管壁で、間の黒く抜けている部分が血管内腔です。
静脈弁がうっすらと、ハの字状に描出されているのがわかります。
静脈は壁がやわらかく、圧迫すると潰れます。

左が圧迫前で動脈と2本の静脈が描出されています。右が圧迫時の画像ですが動脈は変化がありませんが静脈は潰れているのがわかります。
同じものでカラードプラをのせたものがこちらの画像です。
動脈と静脈を圧迫すると正常では静脈が潰れますが、血栓が存在すると圧迫しても潰れません。
また、慢性期では血流のある部分は潰れ、血栓のあるところだけが潰れません。
さらに、急性期のものでは圧迫しても血管径に変化を認めませんが、血栓のエコー輝度が低いため、正常血管と区別が困難となります。したがって、血栓が疑われる場合、圧迫法がかなり有効といえます。
静脈では動脈波形に比べてなだらかな波形が得られます。
また、呼吸による影響を受けます。
吸気では血流が少なくなり、呼気では血流が増加します。腹式呼吸による腹腔内圧の差によりこのような変化が生じます。腹部を手で圧迫しても同様の変化がみられます。
ですが、このような呼吸性変動は大腿静脈の末梢側ではほとんど認められなくなります。

深部静脈血栓症

(DVT:Deep Vein thorombosis)
DVTとは

深部静脈が血栓により閉塞し、還流障害をきたした状態。
血栓が飛ぶと肺塞栓症を誘発する。
← 正常(圧迫法)

左側にあるのが動脈、右側および深部にあるのが静脈で、正常では静脈はほとんど潰れてしまいます。
しかし、血栓がある場合、カラーはのらず、また、圧迫しても潰れません。
DVTでは呼吸性の変動が認められなくなります。

ミルキング

ふくらはぎを挟み込み、揉むように圧迫し、下腿の筋肉を強制的に収縮させる。
⇒中枢側への還流増加
呼吸性の変動が認められない場合は血流量の多いひらめ筋静脈をミルキングすることがあります。
ミルキングとはふくらはぎを挟み込み、揉むように圧迫することで下腿の筋肉を強制的に収縮させ、中枢側への還流を増加させる方法です。

つかんだときに血流量増加の波形が得られます。
すると静脈血流量が増加し、カラードプラによる血管内評価が可能になります。
1回ミルキングを行ったら2回目は少し時間をおいてから行います。すぐに繰り返しミルキングしても、血液がたまっていないため、効果がありません。
血栓がある場合にはミルキングを行なっても波形に変化が表れません。
ミルキングを行う際の注意点として、プローブをしっかり固定してずれないようにすることが重要です。

また、ミルキングを行ううえで、血栓がある場合、肺塞栓症を誘発してしまうリスクがあるので注意しなければなりません。Bモードで、明らかな血栓がある場合にはミルキングは避けるべきといえます。

まとめ

血管超音波検査も、PTA施行時やフィルタ留置時などに役に立つ検査となるのでは???




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