●現場の創意工夫-U − インジェクタ・アシストの利用方法 −
 <佐藤久弥:昭和大学横浜市北部病院>2009.01.17 第251回定例研究会 臨床情報講座


冠動脈造影剤自動注入器acist

インジェクタ・アシストの利用方法
造影剤注入器が使用される様になった背景
  • 冠動脈造影に造影剤注入器が利用される様になって約7年が経過している。
  • 冠動脈造影を行う際のアプーチ部位が鼠経部から手首のとう骨動脈穿刺に移行し、より細いカテーテルを用いて、検査・治療を行おうとした時期に一斉に普及した。
  • 細いカテーテルにおける手押し造影では、造影剤の粘張度の影響でよい造影ができない。造影剤注入器を用いることにより、むらの無い造影が行える。

本日のプログラム


造影剤自動注入器を用いる目的

  1. 定量的評価を期待する
  2. 安定した造影効果を期待する
  3. セッティングの簡素化、安全性に期待する
power injector造影における狭窄率評価の検討
背景

 アシスト導入時、造影剤注入量におけるメーカー推奨値が 秒間5ml、トータル10mL であった。

 しかし、この設定で造影すると心筋まで造影されてしまう状況が多くの症例でみられた。

 そのため、造影剤注入レートの見直しが必要であった。
目的

 当施設では、冠動脈造影にPower Injector(以下Power)を使用し、用手に比べ術者やカテーテルの種類に依らない一定の造影効果が得られています。

 そこで今回その特徴を生かし、造影効果が狭窄率評価に及ぼす影響を明らかにしましたので報告します。

使用機器
X線発生装置
Advantex LC/LP :GE社製
解析装置
DDS :GE社製
power injector
acist :DVx社製
Injector
アンギオマット :ユフ精機社製
狭窄ファントム
2.5 mm :京都科学
カテーテル
4F、5F、6F、7F、8F :テルモ社製
※ 7F、8Fはガイディングカテーテル
造影剤
プロスコープ370/100mL
狭窄ファントムと模擬血管

 左側のラインから模擬血管に秒間2mLの生食を血流と見立て持続注入します。

 右のラインから、4F、5F、6F、7F、8Fのカテーテルを用いて造影剤をファントムに流します。

 造影剤は、全量を5mLとし、注入レートは秒間1〜5mLまで変化させ、狭窄ファントムの動画像を得ます。
測定ジオメトリー

 SID=100cm、アクリル-I.I.間距離=10cm、6インチを使用しています。

 撮影条件は臨床に合わせ管電圧70kVを使用しました。

 また動画像は全て秒間12.5フレームにて収集しました。
狭窄ファントムの造影画像とROIの設定

 画像は動画像で得られ、このようにファントムの狭窄部にROIを設定します。

 このROIにおけるTDCを得ます。

 この際、濃度の数値が低い程X線吸収が高い関係にあります。

各カテーテルサイズと注入レートにおける濃度

 縦軸にカテーテルサイズ、横軸に造影剤注入レートを示します。

 表に示す数値は、各カテーテルサイズにおける、各注入レートで最も高濃度を示したものです。

 全てのカテーテルサイズにおいて注入レートが増えるに従い、高濃度になっていることとが解ります。
各注入レートにおけるTDC

 注入レートにおける濃度について、6Fカテーテルに注目し、TDCを求め示します。

 縦軸に濃度、横軸にFrameを示します。横軸のFrameは、時間とみなしてもらって結構です。

 前スライドでも述べましたが、全てのカテーテルサイズにおいて、この様に注入レートが多くなるにつれて濃度が濃くなりました。
各カテーテルサイズにおける造影剤注入量と狭窄測定値の関係

 縦軸に狭窄測定値、横軸に造影剤注入量を示します。

 狭窄測定値は注入レート2〜2.5mL/sec以上で、カテーテルサイズによらずほぼ一定になります。
濃度と狭窄測定値の関係

 横軸に濃度、縦軸に狭窄測定値を示します。

 この散布図から、濃度が濃くなるほど狭窄測定値が真値にちかずくことが解ります。

 また、狭窄の真値は、アルゴリズムおよび計測装置の性能から2.4mm以上です。
 このスライドは、真値の2.4mmのみを描出しました。

 狭窄測定値2.4mmにおける濃度の平均値は47.34、標準偏差5.79でした。

 このことから、真値の2.4mmを得るためには、55以上の濃度が必用であるとことが解りました。

 以上の結果より、狭窄測定値が安定して真値に近似した算出ができる造影剤濃度、秒間2.5mL以上が指摘造影剤注入条件となる。

結論

 注入レートは、濃度に大きく影響し、測定精度を上げるには、ある一定以上の濃度が必要であることが示唆された。

造影剤自動注入器を安全に利用するための方法

操作手順(組み立て)の標準化
造影剤注入器による事故

良い画像は得られるが、その反面、使い方を誤ると大きな事故につながる。

《 事例 》
 平成15年4月2日(水)に東京大学医学部附属病院から、「造影CT検査の際に造影剤を注入すべきところ、誤って空気が注入されるという医療事故が発生した」旨の報告があり、事実確認を行うため、医療法第25条に基づく立入検査を実施した。
?
 平成15年3月13日(木)の正午頃、CT造影検査のため70歳代の女性に造影剤自動注入器を使用し、造影剤を注入しようとしたところ、造影剤注射筒の中身が空であったため、空気が患者に注入された。  事故後、麻痺や意識障害の症状が出現し、ICU(集中治療室)で治療を行った。

昭和大学グループに起きた事例
内容
(何を行っている際、誰が、何を、どうしたために、どうなった)

・ 心臓カテーテル検査中左冠動脈造影直後、患者様の容態が急変した(除脈、血圧低下)。

・ 原因はルート内のAirが冠動脈に入り空気塞栓がおこったと考えられる。
?
その後の対応
(誰が、いつ、何に対し、どのように対応した)

・ 医師、看護師が、急変直後、ペーシングカテ挿入、IABP挿入の処置を行った。容態回復し、冠動脈造影、下肢造影にても異常認めなかったため検査を終了しCCUにて観察となった。

・ 当日予定検査終了後、業者立会いのもと現場検証を行い、装置によるトラブルは無いか点検した。(装置が原因ではなかった。)
?
原因
(人間 ・ 物 機械 ・ 環境 ・ 管理)

・ 施行医のDr.が、ルートを接続する際にAirの確認を充分にしていなかった。?

標準化の目的

 各付属病院で使用している造影剤注入器が同一でることもあり、組み立て方を標準化することは、誰が対応しても同一レベルの操作を可能にする。

 さらに、危険性に対する不安を最小限に押さえ、造影剤注入器 acist の能力(造影効果の高い画像を得る)を臨床に活かす。
組み立ての標準化で最も大切なこと

コミニュケーション (声の掛け合い)

 ※ 医師、臨床工学技士をリードする心
操作手順(組み立て)の標準化

 今回作成した動画は、北部病院で約6年間にわたり6000件の症例を重ね、築き上げた操作手順である。

 メーカーもこの手順に対して、必要最小限の危険性の無い操作手順であることを認めている。

 そこで、各施設の手順と比較し、必要に応じて手順の変更を行い、この手順を標準化してもらいたい。

 ↓↓

現在、昭和大学統括放射線技術部の標準化の一項目となっている。

▲ 各病院で担当するスタッフが異なっていたり、不明確になっていたりしていた。
● 標準化することで全ての病院で手順が統一され、各スタッフの役割も明確になった。

まとめ

 インジェクタ・アシストの利用方法 として、冠動脈造影に対する造影剤自動注入器の利用方法、造影剤自動注入器を安全に利用するための方法について話した。

 基本的には、造影効果を良好にする目的で使用することはいうまでもない。

 造影剤自動注入器は、臨床上有効な周辺機器となるが、一歩間違えた使用により大参事になりかねない。

 造影剤自動注入器は、正確な使用方法を理解することはもとより、複数スタッフで確認し合いながら使用することが、事故を未然に防ぐ利用方法のひとつと考えられる。




循環器撮影研究会循環器画像研究会循環器技術研究会循環器研究会循環器撮影技術学会心血管画像研究会循研CITEC

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送